2014年4月5日(釜石)
三陸鉄道南リアス線、クウェート国の支援により全線運行再開

東日本大震災の被害に遭った北日本の鉄道が、クウェート政府の資金援助を受け、最後まで不通だった2区間での運行を再開し、3年ぶりの全線運行を果たす。

三陸鉄道は、岩手県沿岸の総距離107.6キロメートルを運行する鉄道で、北リアス線と南リアス線の両路線は、どちらも地域住民の生活に欠かせないもの。しかし2011年3月11日、震度9の地震と、それに伴う津波により、車両、線路、橋脚、駅舎が破損し、運行休止を余儀なくされていた。

この日、南リアス線で運行不通だった15キロメートルの区間が復旧し、全線で運行が再開された。北リアス線は6日に全線運行が再開される。全線復旧を記念して、三陸鉄道は新規に5台の車両を導入した。車両は1台あたり1億6千万円(160万米ドル)の製造費がかかったが、5台の中には、レトロ車両やお座敷車両も含まれている。

これらの新車両の購入には、クウェートからの支援金が充てられた。昨年4月の三陸鉄道南リアス線の部分運行再開時には、クウェートの支援で、3台の新型車両が購入されている。2011年の震災後、クウェート国首長シェイク・サバーハ・アルアハメド・アルジャーベル・アルサバーハ殿下の指示により、クウェート国は500万バレルの原油、5億米ドル相当を日本に贈呈した。この原油を売却した資金が義援金として、最も震災の被害が大きかった3県に分配された。岩手県はそのうちの1県。

クウェートへの御礼を示す、「クウェート国からの支援に感謝します。」と日本語、英語、アラビア語で書かれたメッセージが、全8両の各車両の乗車口横に貼付され、また各車両ともその前後に、クウェート国国章が掲げられている。

アブドゥルラフマーン・アルオタイビ駐日クウェート国大使とジャミーラ夫人は、南リアス線全線運行再開を、関係者や地元の住民とともに祝賀した。祝賀式典に先立ち、大使夫妻ら来賓は、新規に導入されたレトロ車両による記念列車に乗車し、90分の旅を楽しんだ。出発前に大使は、この車両に、再開記念ヘッドプレートを取り付けた。

三陸鉄道の望月正彦社長が、全線運行再開を宣言すると、記念列車は、来賓と抽選で選ばれた48名の乗客を乗せて出発した。運行再開記念乗車券も発売された。

東京から北東およそ430キロメートルに位置する岩手県釜石市の釜石駅で行われた記念式典には、坂井学国土交通大臣政務官兼復興大臣政務官も参列し、「三陸鉄道の全線開通は、地域住民にとって被災地の復興を実感させるものであり、復興をさらに前に進ませることが期待されている」、と祝辞を述べた。

三陸鉄道は、第三セクター方式で1984年に開業して以来、高校への通学や病院への通院、買い物など、地域住民の足として様々な役割を果たしてきた。昨年、人気テレビドラマ「あまちゃん」に登場する鉄道会社のモデルとなったことで、全国からの注目を集めるようになった。このドラマは、被災地の人々を元気づけただけでなく、全国からの乗客を集めることに一役買った。

クウェートからの支援は、8両の車両購入のほかに、被災した5つの駅舎の再建や、他の施設の整備に役立てられた。三陸鉄道の被害は、橋脚や駅舎を含めて全線で320ヶ所近くに及び、その復旧にかかった費用は、およそ92億円(9000万米ドル相当)。

三陸鉄道株式会社理事長を兼任する達増拓也岩手県知事は、クウェートからの支援と並び、関係者ひとりひとりの尽力と協力に対する謝意を表した。

「新しいレトロ車両は、クウェートの支援によって導入された。三陸鉄道は、地域住民の生活の足であるとともに、地域間の交流や、観光等による地域振興のために不可欠なインフラ。さらに被災した三陸沿岸の活性化のけん引役としても期待される」と、達増知事は祝辞の中で述べた。

「南リアス線の全線運行再開は、地域住民に希望と勇気を与えるとともに、岩手県民、全国、全世界の方々からいただいた御支援への恩返しにつながる」、と県知事は強調した。

震災は、日本の東北地方を中心に19,000名余りの死者や行方不明者を出し、岩手県内でも5,800名の住民が犠牲になった。達増知事は、2014年を「本格復興推進年」と位置付け、被災者ひとりひとりが安心して生活を営むことができる環境整備のために、復興への取り組みをさらに進めていくとした。

喜びに満ちた地域住民や鉄道ファンは、全線での運行再開を祝福するために、南リアス線沿線の駅に横断幕やクウェートの小旗を持って集まり、列車を出迎えた。

「以前は、駅から歩いてたった2分の家に住んでいましたけど、あの大きな津波に家が呑み込まれてしまい、今は仮設住宅に住んでいます。三陸鉄道の復旧は、本当に嬉しいことで、今日は涙が止まりません。まるで夢を見ているようです。クウェートの皆さまに、私からの御礼の気持ちを伝えてください。ありがとうございます」と、70代の女性は、涙ながらにクウェート国営通信の特派員に話した。

記念列車に乗車していた年配の夫婦は、娘さんが当選した乗車券でこの列車に乗ることができたという。「金婚式のお祝いにと、娘がくれたこの乗車券は、忘れられない贈り物となりました。三陸鉄道の全線復旧を、ずっと待ち望んでいましたから。今日とうとう帰ってきたのですね」、と夫婦は話した。

式典後、報道各社の囲み取材に応じたアルオタイビ大使は、一連の祝賀行事に参加できたことへの喜びを教師、クウェート国が今後も、日本の復興への取り組みを支援していくことを誓った。

「クウェートは友人を支援するものです。クウェートの国民と政府は、独立以来日本から受けてきた支援を決して忘れません。日本の皆さまがこの試練を乗り越えてゆくことをお祈りしますし、もちろんそうすることでしょう。今日は、復興の進捗が見られて、私もとても嬉しいです」、と大使は語った。

続いてジャミーラ夫人は報道陣に対し、こう述べた。「今日は、地元の方々と、鉄道の復旧をお祝いすることができて、とても嬉しいです。今日のことは決して忘れませんし、今日は人生で最高の1日です」。

(記事の原文と写真:国営クウェート通信石神特派員、翻訳:大使館)